*************** 名歌鑑賞 ***************


契りおく 花とならびの 岡の辺に あはれ幾世の
春を過ごさん
                            兼好法師

(ちぎりおく はなとならびの おかのべに あわれ
 いくよの はるをすごさん)

意味・・自分が死んだなら一緒に過ごそうと、約束し
    て桜の木を植え、それと並んで墓地を作った
    が、この慣れ親しんだ双ヶ岡(ならびがおか)
    に、ああ、これから自分は桜の花とともにど
    れほどの年月(春)を過ごすのであろう。

    隠棲して双ヶ岡に墓所を作り、その傍らに桜
    の木を植えた時の歌です。

 注・・契り=約束。死んだら一緒に過ごそうと約束  
     して。 
    ならび=「並び」と「双ヶ岡」の掛詞。
    ならびの岡=京都市右京区御室仁和寺の南に
     ある岡。
    あはれ=感動詞。ああ。
    幾世=どれほどの年月。

作者・・兼好法師=1283年頃の生まれ。後に二条院に
    仕え、蔵人左兵衛佐(くらうどさひょうのすけ)
    になっていたが出家。「徒然草」で有名。
 
出典・・岩波文庫「兼好法師歌集・19」。