*************** 名歌鑑賞 ***************


はなし出す 人の尻馬 口車 いづれ調子に
のりあひの舟 
              平秩東作

(はなしだす ひとのしりうま くちぐるま いずれ
 ちようしに のりあいのふね)

詞書・・乗合の舟に乗りて。

意味・・こざかしげにまず世間話・雑談の口を切る人
    がいる。その尻馬に乗ってまくしたてる者、
    うまく口車に乗せられる人など、なににして
    も調子にのるおっちょこちょいの連中のいる
    乗合舟の風景である。

    馬・車・舟と乗り物づくしに、尻・口の対照
    など、言葉の面白さに笑わせながら、望まし
    い(?)人間社会を描いています。

 注・・尻馬=尻馬に乗る、他人の言に無批判に従っ
     て行動する。
    口車=口車に乗る、うまく言いくるめられて
     だまされる。
         調子にのり=乗合舟を掛ける。

作者・・平秩東作=へづつとうさく。1726~1789。
    家業の馬宿を継ぐ。江戸時代の狂歌師。

出典・・狂歌「万代」(小学館「日本古典文学全集・
    狂歌」)