*************** 名歌鑑賞 ****************


同じくは 共に見し世の 人もがな 恋しさをだに
語りあはせむ
                 宗良親王

(おなじくは ともにみしよの ひともがな こいしさを
 だに かたりあわせん)

詞書・・延元の頃(1338年)、吉野を離れて東国に下りまし
    た後、多くの年(36年)を経て文中3年(1374年)に
    吉野の行宮(あんぐう)に参りましたが、かって会
    った人もなく、万事昔の事が思い出されることば
    かり多くありましたので、「独り懐旧」の題で詠
    みました歌。

意味・・どうせ昔と変わってしまったことを嘆くのなら、
    一緒に昔のことを見た人がいて欲しいものだなあ。
    もしいたならその人と共に今は変わってしまった
    昔への恋しさを話会うだけでもしたいものだ。

作者・・宗良親王=むねよししんのう。1311~1385頃。
    後醍醐天皇皇子。元弘の乱の時讃岐に配流された。
    「新葉和歌集」を撰ぶ。

出典・・新葉和歌集・1306。