*************** 名歌鑑賞 ****************


梅が香に 昔をとへば 春の月 こたへぬ影ぞ 
袖に映れる

               藤原家隆

(うめがかに むかしをとえば はるのつき こたえぬかげぞ

 そでにうつれる)

意味・・梅の香りに誘われて懐かしさのあまり昔のことを

    春の月に尋ねると、答えない月の光が涙に濡れた
    私の袖の上に映った。
 
    伊勢物語四段が背景となっています。
    愛情が深くなっていた女性がいたが、突然身を隠
    した(知らせずに結婚した)。翌年探し訪ねてみる
    と、落ちぶれた姿になっていた。還らぬ昔を思う
    と懐旧の涙が出た。

 注・・梅が香に=梅の花盛りの頃を思い出して、以前付き
     合っていた女性が恋しくなったので、の意。
    影=月の光。

    袖=懐旧の涙で濡れた袖。

作者・・藤原家隆=ふじわらのいえたか。1158~1237。非

    参議従二位。「新古今集」撰者の一人。

出典・・新古今和歌集・45。