**************** 名歌鑑賞 ***************


冬ごもる 病の床の ガラス戸の 曇りぬぐへば
足袋干せる見ゆ
                正岡子規

(ふゆごもる やまいのとこの がらすどの くもり
 ぬぐえば たびほせるみゆ)

意味・・寒い冬中、家にこもって病床に臥している
    自分であるが、病室のガラス障子の曇りを
    ぬぐってみたら、庭に足袋を干してあるの
    が見えた。

    テレビも無い時代、同じ場所に臥し、来る
    日も来る日も変化の無い視覚の世界は、心
    に受ける憂悶は深いもの。その無変化のよ
    うに見える物の中に、微妙な変化を目と心
    によってドラマとして描写して、自己を慰
    める作品となっています。
   「足袋干せる」の足袋は子規の物であろう。
    洗濯して干してくれている人への感謝の気
    持ちがあります。        

 注・・冬ごもる=冬の寒いうち、家の中にこもっ
     ている。

作者・・正岡子規=まさおかしき。1867~1902。
    35歳。東大国文科中退。肺を病み喀血して
    子規の雅号を用いる。「ホトトギス」を創
    刊。歌集「竹の里歌」。

出典・・竹の里歌。