*************** 名歌鑑賞 ***************


死はそこに 抗ひがたく 立つゆえに 生きている一日
一日はいづみ

                  上田三四二

(しはそこに あらがいがたく たつゆえに いきて

 いるひとひ ひとひはいずみ)

意味・・病状を癌と知った時、死はすぐ目の前に避け

    がたく立ちふさがり、病気の厳しさを否応な
    く見据えねばならない。不安にうちひしがれ
    てしまいそうな日々。でも、だからこそ、生
    きている一日一日が宝物なのだ。

    43歳の時、病気が結腸癌だと分った時に詠ん
    だ歌です。死ぬまで残り少ない日々。この残
    された時間の一刻一刻は、「刻(とき)はいま
    黄金(きん)の重み」と意識し、こんこんと湧
    き出て来る生命の泉、として詠んでいます。

 注・・いづみ=泉。地中から湧き出る水。みなもと。
     黄金のように価値がある一刻一刻、それが

     湧き出る命の泉として捉えている。

作者・・上田三四二=うえだみよじ。1923~1989。

    京大医学部卒。医学博士。

出典・・歌集「湧井」(栗木京子著「短歌を楽しむ」)