**************** 名歌鑑賞 ***************


まだ知らぬ 人のありける 東路に われも行きてぞ
住むべかりける      
                  藤原実頼

(まだしらぬ ひとのありける あずまじに われも
 ゆきてぞ すむべかりける)

詞書・・わが子の藤原敦敏(あつとし)左大臣が36
    歳で亡くなったが、それを知らない東国の
    人が馬を送って来た。

意味・・敦敏に馬を献上してくる人のある所を見る
    と、敦敏のことを知らない人が東国にいる。
    その敦敏の死んだことをまだ知らない人も
    いる東国に、私も行って住めばよかった。

    離れたところに住んでいれば死んだ子の事
    を知らずに済み、不幸があった事を知らな
    いので、悲しまなくてよいのに、という気
    持を詠んだ歌です。

作者・・藤原実頼=ふしわらさねより。899~970。
    関白太政大臣。

出典・・後撰和歌集・1386。