**************** 名歌鑑賞 ****************


水の面に 生ふる五月の 浮き草の 憂きことあれや
ねを絶えて来ぬ 
                 凡河内躬恒

(みずのおもに おうるさつきの うきぐさの うきこと
 あれや ねをたえてこぬ)

意味・・水面に生えている五月の浮草の「うき」では
    ないが、あなたは「憂き」事があるのか。
    根なしの浮草のごとくとんと音信も絶え訪れ
    もないことです。

      詞書は長い間訪ねて来なかった友達のもとに
    詠んで贈った歌、です。

 注・・憂き=いやなこと、不満(作者に対して)なこと。
    ねを絶えて=音信が絶えて、「ね」は根と音の
     掛詞。

作者・・凡河内躬恒=おうしこうちのみつね。生没年未詳。
    894頃活躍した人。古今和歌集の撰者の一人。

出典・・古今和歌集・976。