**************** 名歌鑑賞 ***************


やまぶきの みのひとつだに 無き宿は かさも二つは
もたぬなりけり       
                   橘曙覧

(やまぶきの みのひとつだに なきやどは かさも
 ふたつは もたぬなりけり)

詞書・・笠を貸したのだがなかなか返してくれない
    ので、子供に取りに行かせる為に詠んだ歌。

意味・・山吹は花が咲いても実の一つもないように、
    我が家にも蓑は一つも無く笠も二つとは無
    いのですよ、どうか、お貸しした笠をお返
    し下さい。

    催促が柔らかく感じられます。

    本歌は「ななへやへ花はさけども 山吹の
    みのひとつだになきぞかなしき」です。
             (意味は下記)   

 注・・みのひとつ=山吹の実一つと雨具の蓑一つ
      を掛ける。

作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1868。
    国文学者。家業を異母弟に譲り25歳頃隠棲。
    「独楽吟」等の歌集がある

出典・・岩波文庫「橘曙覧全歌集」。

本歌です。
ななへやへ 花はさけども 山吹の みのひとつ
だに なきぞかなしき 
                 兼明親王

詞書・・雨の降った日、蓑を借りに来た人がいまし
    たので、山吹の枝を折って与えました。そ
    の人が帰りました翌日、山吹の意味が分ら
    ないといいよこした返事に詠みました歌。

意味・・七重八重に花は咲いているけれど、山吹が
    実の一つさえもないように、蓑一つさえ無
    いのは悲しいことです。

作者・・兼明親王=かねあきらしんのう。914~
    987。従二位・左大臣。

出典・・後拾遺和歌集・1155。