**************** 名歌鑑賞 ****************


鳴き弱る 籬の虫も 止めがたき 秋の別れや 
かなしかるらむ
                紫式部

(なきよわる まがきのむしも とめがたき あきの
 わかれや かなしかるらん)
 
詞書・・その人、遠きところへ行くなり。秋の果つる
    日来たるあかつき、虫の声あはれなり。

意味・・垣根のキリギリスの鳴き声が弱まっている。
    それにつけても秋の別れを止めることは出来
    ないものだなあ。

    秋の虫の鳴き声が弱まって、秋も終わろうと
    している寂しさを詠んでいます。
    なお、題意により、仲の良い友が遠くに嫁ぎ、
    別れの寂しさも重ねています。

 注・・籬(まがき)=竹や柴で粗く編んだ垣根。
 
作者・・紫式部=むらさきしきぶ。970~1016。
 
出典・・家集「紫式部集」。