*************** 名歌鑑賞 ***************


身に近く 来にけるものを 色変る 秋をばよそに
思ひしかども 
                 六条右大臣室

(みにちかく きにけるものを いろかわる あきをば
 よそに おもいしかども)

意味・・私の身辺に来ていたのに。草木の色変る
    秋を、かかわりのないものと思っていた
    けれども。

    男の飽き心に気づいて嘆き心を詠んでい
    ます。

    本歌は「身に近く秋や来ぬらむ見るまま
    に青葉の山もうつろひにけり」です。
         (意味は下記参照)

 注・・色変る=草木の色の変る秋。男の心変わ
     りを暗示。
    よそに=関係の無いものと。

作者・・六条右大臣室=ろくじょううだいじんの
    しつ。生没年未詳。源顕房(従一位右大臣)
    の妻。

出典・・新古今和歌集・1352。

本歌です。
身に近く 秋や来ぬらむ 見るままに 青葉の山も
うつろひにけり         
                  紫の上

意味・・身に近く秋が来たのでしょうか(私も飽かれ
    る時になったのかしら)。見ているうちに、
    青葉の山も紅葉に色変わりしてしまった。

    紫の上が光源氏の飽き心を嘆いた歌です。

出典・・源氏物語。