************** 名歌鑑賞 ***************


竹敷の 浦みの黄葉 我れ行きて 帰り来るまで
散りこすなゆめ 
                壬生宇太麻呂
              
(たけしきの うらみのもみじ われゆきて かえりく
 るまで ちりこすなゆめ)

詞書・・遣新羅の途中で竹敷の浦に船泊りした時に
    各々の思いを詠んだ歌。

意味・・竹敷の浦のあたりの紅葉よ、私が新羅へ行
    って再びここに帰ってくるまで、散らない
    でいてくれ、けっして。
 
    紅葉を惜しむ心に、新羅の往復が短期間で
    すむように願った歌です。

    無事に仕事が終え、この紅葉が散らない内
    に帰って来たいものだ。

 注・・竹敷の浦=対馬の浅茅(あそう)の南部の湾。
    新羅(しらぎ)=朝鮮半島の古代王国。
    ゆめ=禁止表現を伴って、決して。

作者・・壬生宇太麻呂=みぶのうだまろ。746年頃の
    人。大判官(副使の次の官)として遣新羅に行
    く。従五位下。

出典・・万葉集・3702。