**************** 名歌鑑賞 ****************

 
いのちなき 砂のかなしさよ さらさらと 握れば指の
あひだより落つ     
                    石川啄木
              
(いのちなき すなのかなしさよ さらさらと にぎれば
 ゆびの あいだよりおつ)

意味・・しっかりと掴(つか)まえていないと砂は
    指の間からさらさらと落ちる。悲しい事
    に、それが命のない砂というものだ。

    主体性のない砂のように、社会の流れに
    押し流されるこの自分の悲しさよ。
    掴まえた幸福も、気を緩めると砂と同じ
    ように逃げていく。

作者・・石川啄木=いしかわたくぼく1886~1912。
    26歳。盛岡尋常中学校を中退後上京。「一
    握の砂」「悲しき玩具」などの歌集を刊行。
 
出典・・ 一握の砂。