*************** 名歌鑑賞 *************


はたなかの かれたるしばに たつひとの うごくともなし
ものもふらしも
                    会津八一
 
(畑なかの 枯れたる芝に 立つ人の 動くともなし
 もの思ふらしも)

詞書・・平城宮址の大極殿芝にて。

意味・・畑の中の枯れた大極殿址の芝に立つ人は
    動こうともせずじっと佇んでいるが、け
    だし物思いに耽っているのであろう。

    奈良時代の大極殿の址が、今見ると「畑
    なかの枯れた草」であることに、感慨を
    催して詠んだ歌です。

 注・・平城宮・大極殿=今の奈良県生駒郡に710
     年頃造営され、784年長岡京に遷都され
     るまで70年間、奈良の都として繁栄した。
    大極殿芝=大極殿址の土壇に生えている草。

作者・・会津八一=あいづやいち。1881~1956。
    早大文科卒。文学博士。美術史研究家。歌
    集「鹿鳴集」「南京新唱」。
 
出典・・歌集「南京新唱」。