**************** 名歌鑑賞 *************** 


そえにとて とすればかかり かくすれば あな言い知らず
あふさきるさに               
                    詠人知らず

(そえにとて とすればかかり かくすれば あないい
 しらず あうさきるさに)

意味・・そうであるからといって、ああすればこうなり、
    こうすればああなる。ああ、なんと言ったらい
    いか分からない。世の中というものは、こちら
    が良ければあちらが悪いというように、行き違
    いばかりであって。

              株を買ったら下がり売ったら上がる。このよう
    に、事がうまく運ばないために、途方にくれ
    ている状態を詠んでいます。

 注・・そえ=「え」は故、「その故に」の約。そうで
     あるからといって。
    とすればかかり=ああすればこうなり。
    かくすれば=こうすればああなる。下に「とあり」
      が省略されている。
    あな言い知らず=ああ、なんと言ったらよいか分か
     らない。
    あうさきるさに=行ったり来たりするさま。行き違
     いの状態。一方が良ければ他方が悪いさま。
 
出典・・古今和歌集・1060。