***************** 名歌鑑賞 *****************

 
七重八重 花は咲けども 山吹の みのひとつだに 
なきぞあやしき       
                兼明親王
            
(ななえやえ はなはさけども やまぶきの みのひとつだに
 なきぞあやしき)

意味・・山吹は七重八重と花は咲くけれど、実が一つも無い
    のが不思議だが、その山吹と同じように我が家にも
    蓑一つさえないのです。

    雨の降る日、蓑を借りる人がいたので山吹の枝を
    与えたところ、その意味が分からないと言ったので
    この歌を詠んで贈ったものです。

    贈られた人は太田道灌で、蓑を借りようとして山吹
    の枝を差し出されたが、意味がわからなかったのを
    恥じ、発奮して和歌を学んだという逸話があります。

 注・・みの=「実の」と「蓑」を掛ける。
    あやしき=不思議だ。神秘的だ。

作者・・兼明親王=かねあきらしんのう。914~987。醍醐天
    皇第16皇子。左大臣。

出典・・後拾遺和歌集・1154。