**************** 名歌鑑賞 ****************


鮎くれてよらで過ぎ行く夜半の門
                   蕪村

(あゆくれて よらですぎゆく よわのかど)

意味・・夜半に門を叩いたのは、作者に親しい人であった
    だろう。こんな時間に誰が訪ねて来たのだろうか
    と不審顔で門を開けた主人に、不意の客は、数匹
    の鮎を押し付けるようにすると、「沢山とれたか
    ら、少しだけれど食べて貰おうと思って」と言い
    置いたまま、ろくに挨拶もせず足早に帰って行っ
    た。驚きと喜びで、主人のほうもろくに礼も言わ
    ず、渡された活きのいい鮎を手に、いっとき門に
    佇(たたず)んでいた。

    「よらで過ぎ行く」には、客の動作だけでなく、
    とっさのことでまともに対応出来なかった自分を
    悔しくも、また相手に申し訳なく思っている主人
    の気持ちも察することが出来ます。

作者・・蕪村=ぶそん。与謝蕪村。1716~1783。
    南宗画も池大雅とともに大家。

出典・・竹西寛子著「松尾芭蕉集・与謝蕪村集」。