*************** 名歌鑑賞 ***************
親しからぬ 父と子にして 過ぎて来ぬ 白き胸毛を
今日は手ふれぬ
土屋文明
今日は手ふれぬ
土屋文明
(したしからぬ ちちとこにして すぎてきぬ しろき
むなげを きょうはたふれぬ)
むなげを きょうはたふれぬ)
意味・・あまり親しくない父と子として、我々親子は
今日まで過ごして来た。その父も今は重い病
で臥床(がしょう)している。そのような父の
白くなった胸毛に今日は手を触れた。思えば
こんなこともしたことのない私だった。親子
の縁(えにし)などというものは不思議なもの
だ。
今日まで過ごして来た。その父も今は重い病
で臥床(がしょう)している。そのような父の
白くなった胸毛に今日は手を触れた。思えば
こんなこともしたことのない私だった。親子
の縁(えにし)などというものは不思議なもの
だ。
「父なむ病む」の題で詠んだ歌です。
父は農民であったが多くの事業に手を出して
失敗ばかりした。あげくの果て家を売り村を
捨てた。そのような父であったのでやさしく
してもらえず親しみを持てなかった。
父は農民であったが多くの事業に手を出して
失敗ばかりした。あげくの果て家を売り村を
捨てた。そのような父であったのでやさしく
してもらえず親しみを持てなかった。
作者・・土屋文明=つちやぶんめい。1890~1990。
東大哲学科卒。明治大学教授。
出典・・学灯社「現代短歌評釈」。
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