**************** 名歌鑑賞 ****************


りゆく 世にし有せば うつせみの 人の言の葉
うれしけもなし        
                  良寛
               
(うつりゆく よにしありせば うつせみの ひとの
 ことのは うれしけもなし)

意味・・人の心が変わって行く世の中であるので、
    人の暖かく嬉しそうな言葉も、何も嬉しい
    ことはない。

    男心(女心)と秋の空というけれど。

    参考歌として、
    「偽りのなき世なりせばいかばかり人の言
    の葉嬉しからまし」(意味は下記参照)

 注・・移りゆく=心が他に移って行く。
    うつせみ=この世、現世。「命」・「人」
     に掛かる枕詞。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。

出典・・谷川俊朗著「良寛全歌集」。

参考歌です。

いつはりの なき世なりせば いかばかり 人の言の葉
うれしからまし             
                    詠み人知らず
                   
(いつはりの なきよなりせば いかばかり ひとの
 ことのは うれしからまし)

意味・・この世が偽りというものの存在しない世で
    あったなら、人がかけてくれる情けの言葉
    も素直に聞いて、どれほど嬉しく思う事で
    あろうか。

    恋に関してだけではなく人間への不信の念
    を底にもっている歌です。

 注・・世=男女の仲。

出典・・古今集・712。