***************** 名歌鑑賞 *****************


凡ならば かもかもせむを 畏みと 振りたき袖を
忍びてあるかも
                 児島

(おおならば かもかもせんを かしこみと ふりたき
 そでを しのびてあるかも)

意味・・あなた様が並みのお方であったら、別れを惜しんで
    あれこれ思いのままに振り舞いたいのですが、皆が
    いるので、畏れ多いと思って、振りたい袖も振らな
    いでじっとこらえている私です。

    太宰帥(だざいのそち)大伴旅人が京に上る時、浮か
    れ女が別れを惜しんだ歌です。
    去る人が貴人なので、身の程をわきまえて、強い惜
    別の思いをこらえた歌です。

 注・・凡(おお)=平凡なさま、普通だ。
    かもかも=どのようにも、ああもこうも。
    畏(しこ)み=恐れ多いと思う。
    太宰帥(だざいのそち)=大宰府の長官。従三位に相
     当。
    浮かれ女=諸国を歩き回って歌舞などの芸や色を売
     る女。遊女。

作者・・児島=こじま。伝未詳。筑紫国(福岡県)の浮かれ女。

出典・・万葉集・965。