**************** 名歌鑑賞 ***************


おもうどち 寒き雨夜も 忘れけれ 宇治栂尾の
品定めして
                 井上文雄

(おもうどち さむきあめよも わすれけれ うじ
 とがのおの しなさだめして)

意味・・茶を好む者同士が、気か付けば、寒い雨夜さえ
    忘れさっているのだ。宇治がおいしいか栂尾が
    おいしいか、茶の味の品評をしあって。

 注・・栂尾=京都市右京区。明恵上人が栂尾にお茶を  
     植栽した。
    宇治=京都の南部に位置する。栂尾のお茶が移
     植され、やがて宇治は茶所になった。

作者・・井上文雄=いのうえふみお。1800~1871。江
      戸の人で田安藩の待医。

出典・・歌集「調鶴集」(松本章男著「京都百人一首」)