**************** 名歌鑑賞 ****************


かかる夜も はなやかにして 人あらむ 戸の面の草生
雨しづかなり
                   百田宗治 

(かかるよも はなやかにして ひとあらん とのもの
 くさふ あめしずかなり)

意味・・こんな夜も、匂うような華やかさをもって、誇ら
    かに立ち振る舞っていることだろう。その様子が
    目に浮かばれて来る。ふと、我にかえり、一人居
    の部屋から、窓外に目を移すと、灯のわずかに届
    く庭前の若草に、雨がしとしとと音もなく降りか
    かって静かである。

    片思いながら、好きな人を思い浮かべて詠んだ歌
    です。

 注・・かかる夜も=このような夜も。いつもそうである
     が、殊に、自分が一人ぽっちでいる、こんな暗
     い淋しい静かな夜でも。
    はなやかに=作者の目に浮かぶ美しさであり、頭
     の中に描かれた幻影。

作者・・百田宗治=ももたそうじ。1893~1955。詩人、作詞
    家。童謡「どこかで春が」有名。

出典・・歌集「愛の鳥」。