*************** 名歌鑑賞 ***************


何ごとも 皆昔とぞ なりにける 花に涙を
注ぐ今日かも
                良寛

(なにごとも みなむかしとぞ なりにける はなに
 なみだを そそぐきょうかも)

意味・・何事も全て、みな昔のこととなってしまった。
    あなたと一緒に見て楽しんだ花を前にして、
    涙を流す今日である。

    花好きの知人が亡くなって詠んだ歌です。
    花が好きなため、お寺の梅の木を掘って盗も
    うとして捕まった。その後村人からは花盗人
    と後ろ指を指されるようになった。彼はその
    辛い思いで生きてきたのだが亡くなった。可
    哀そうな生き方をした人であった。今ではそ
    れも昔のこととなってしまった。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。

出典・・谷川俊朗著「良寛全歌集」。