**************** 名歌鑑賞 ****************


月もなほ おなじ光にて 澄むものを いかに変われる
我が身なるらん
                  宗尊親王

(つきもなお おなじひかりにて すむものを いかに
 かわれる わがみなるらん)

意味・・空を仰ぎ見ると、14年前と同じように月は美しく
    澄んでいる。所がこの私は14年前とは全く反対に
    鎌倉から京へと囚人同様に護送されていく。あの
    時の華やかさと比べると、今のこの惨めさはどう
    いうことだろうか。悔しく、また嘆かわしいこと
    である。

    14年前、11歳の宗尊親王は征夷大将軍として、華
    やかな礼服を着込み、大勢の供を従えて威風堂々
    と鎌倉に迎えられたのであった。所が14年後には、
    鎌倉幕府の執権者・北条宗時によって征夷大将軍
    を辞任させられる運命となった。辞任は、成長し
    北条氏の意のままに動かなくなったので嫌われ追
    放されたもので、この時に詠んだのが上の歌です。

作者・・宗尊親王=むねたかしんのう。1241~1274。後
            嵯峨天皇の第一皇子。

出典・・後藤安彦「日本史群像」。