***************** 名歌鑑賞 *****************


君がよりし 藤棚の陰に 霜葉落ち 君が見し水は
流れゆくなり
                 川田順

(きみがよりし ふじただなのかげに しもばおち きみが
 みしみずは ながれゆくなり)

意味・・あなたが寄りかかっていた藤棚の季節もさり、今は
    そのかげに霜葉も散って、あなたが見ていた川の水
    は、思い出をのせて流れている。

    親たちに反対された恋は実らなかったけれど、楽し
    かった恋の思い出は心に焼き付けられ、いつまでも
    生き続けているのであった。

 注・・霜葉=霜に打たれた葉。

作者・・川田順=かわたじゅん。1882~1966。東大法科卒。
    佐々木信綱に師事。

出典・・歌集「伎芸天」(桜楓社「現代名歌鑑賞事典」)