***************** 名歌鑑賞 ***************


ただひとり 吾より貧しき 友なりき 金のことにて
交り絶てり
                  土屋文明

(ただひとり われよりまずしき ともなりき かねの
 ことにて まじわりたてり)

意味・・ただ一人だけ自分よりも貧しい友であった。その
    友とも、金銭のことが原因となっていつしか友情
    を絶ってしまった。

    あの時お金を貸してやれば良かったと思う。自分
    も貧しくて貸せなかったのだが、なんとか余裕が
    出来た現在、ふとそのことが思い出される。

作者・・土屋文明=つちやぶんめい。1890~1990。東大
            卒。明治大学教授。

出典・・歌集「往還集」(短歌新聞社「土屋文明の秀歌」)