**************** 名歌鑑賞 **************


神風の 伊勢の浜荻 折り伏せて 旅寝やすらむ
荒き浜辺に
                碁檀越妻

(かみかぜの いせのはまおぎ おりふせて たびねや
 すらん あらきはまべに)

意味・・伊勢の国の海辺に生い茂っている荻を折り伏せ
    て寝床とし、わが夫は旅寝をしていることだろ
    うか、その荒々しい海辺で。

    夫が伊勢国に行った時、京に留まった妻が詠ん
    だ歌です。

    当時の旅は野宿も多く旅は大変であった。その
    旅が無事に終えて欲しいと、妻が祈っている歌
    です。

 注・・神風の=「伊勢」の枕詞。
    荻=イネ科の多年草。水辺や原野に生える。薄
     に似ている。

作者・・碁檀越妻=ごのだにおちのめ。生没年未詳。碁
    は氏。檀越は寺の施主の意で称号。

出典・・万葉集・500。