**************** 名歌鑑賞 *****************


遠くあらば わびてもあらむを 里近く ありと聞きつつ
見ぬがすべなさ
                   田村大嬢

(とおくあらば わびてもあらんを さとちかく ありと
 ききつつ みぬがすべなさ)

意味・・遠くにいるならわびしく思っても、それはそれで
    過ごせましょうが、この里近くお住まいと聞きな
    がら、お逢い出来ないのはやりきれない思いです。

    坂上大嬢に贈った歌です。田村大嬢は父とともに
    田村の里に住み、坂上大嬢は母とともに坂上の里
    に住んでいた。異腹でも姉妹だったので恋しく思
    い、訪問を心待ちにした歌です。

 注・・わびて=もの寂しい。気落ちして心が晴れない。
    あり=健在である、その場に居合わせる。
    すべなさ=途方に暮れる、困るさま。
    坂上大嬢=さかのうえのおおいらつめ。母の坂上
     の里に居たので坂上大嬢といった。田村大嬢の
     妹。

作者・・田村大嬢=たむらのおおいらつめ。父の里の田村
    に居たので田村大嬢という。坂上大嬢の姉。

出典・・万葉集・758。