************** 名歌鑑賞 **************


古の 人に我れあれや 楽浪の 古き都を 
見れば悲しき
               高市黒人

(いにしえの ひとにわれあれや ささなみの ふるき
 みやこを みればかなしき)

詞書・・近江の古き都を感傷(かな)しびて作る歌。

意味・・私は昔の人なのだろうか。そうではないはず
    なのに、大津の宮の廃墟を見ると、この都の
    栄えた頃の人であるかのように哀しいことだ。

    古き都は大津の宮。667年天智天皇は近江の
    大津に遷都したがその後672年の壬申の乱で
    敗れ天武天皇が飛鳥に都を移すまでの5年間
    の都であった。その後廃墟となった。

 注・・楽浪=琵琶湖の中南部沿岸の古名。

作者・・高市黒人=たけちのくろひと。伝未詳。

出典・・万葉集・32。