*************** 名歌鑑賞 **************


眉のごと 雲居に見ゆる 阿波の山 懸けて漕ぐ舟
泊まり知らずも
                 船王

(まゆのごと くもいにみゆる あわのやま かけて
 こぐふね とまりしらずも)

意味・・眉のように横長く遥か彼方に見える阿波の山、
    その阿波の山を目指して漕いで行くあの舟の
    今夜の泊りはいったいどこであろうか。

    難波に行った時に詠んだ歌です。海上の風景
    を大観したものですが、大海の中の一艘の舟
    の今夜泊まる所を心配する中で、自分のおか
    れた運命を重ねています。(藤原仲麻呂の反
    乱に巻き添えになった)
    
 注・・雲居=遠く離れた所。
    阿波の山=難波(大阪)から四国の阿波の山は
     見えないが、西方遥かの海上に見える山を
     そう呼んだもの。
    懸けて=めがけて。命を懸ける、というよう
     に危険を冒す意も含まれている。
    
作者・・船王=ふなのおおきみ。生没年未詳。淳仁(じ
    ゆんにん)天皇の兄。746年太宰帥。隠岐に流
    される。

出典・・万葉集・997。