**************** 名歌鑑賞 ****************


草づたふ 朝の蛍よ みじかかる われのいのちを
死なしむなゆめ
                斎藤茂吉

(くさずたう あさのほたるよ みじかかる われの
 いのちを しなしむなゆめ)

意味・・朝の草の上を心ぼそげにはっている蛍よ。おまえ
    はつかの間の命しかもたないはかない存在だが、
    それは私にしても同じことだ。そう思えば今おま
    えを眺めているこの私の命をなんとしても死なせ
    てはならない。必ず活かしてほしいと祈るような
    気持ちになって来る。

 注・・朝の蛍=朝の明るさで光を失っている蛍。

作者・・斎藤茂吉=さいとうもきち。1882~1953。東大
    医学部卒。精神病医。伊藤佐千夫門下。

出典・・歌集「あらたま」(学灯社「現代短歌評釈」)