**************** 名歌鑑賞 ****************


かたはらに おく幻の 椅子一つ あくがれて待つ
夜もなし今は
                大西民子

(かたわらに おくまぼろしの いすひとつ あくがれて
 まつ よもなしいまは)

意味・・自分のかたわらにおく幻の椅子が見える。そこ
    には誰も座っていない。かってはその椅子に座
    るべき人、ともに過ごした人を思い描いた。し
    かし、今はもう幻の椅子は空席のまま、あこが
    れて待つ夜もなくなった。

    椅子に座っていた幻の人は夫なのだろうか。

 注・・あくがれて=憧れて。思いこがれて。あこがれ
     て。

作者・・大西民子=おおにしたみこ。1924~1994。奈
    良女子高等師範学校卒。高等女学校教諭。木俣
    修に師事。

出典・・歌集「まぼろしの椅子」(東京堂出版「現代短歌
    鑑賞事典」)