**************** 名歌鑑賞 ****************


曇り深き 宗谷のせとの 朝明けを 我が乗れる船
ただ一つなり
                 石榑千亦

(くもりふかき そうやのせとの あさあけを わが
 のれるふね ただひとつなり)

意味・・曇りの深い宗谷海峡の明け方、海上に見えるもの
    といえば、自分が乗っている船がただ一つのみで
    ある。

    海峡といっても大きな海のことなので、稚内を出
    航して一時間もすれば陸地の影は見えなくなる。
    見えるのは水平線と空と雲に海原。この何一つも
    ない光景に感動して詠んでいます。

 注・・宗谷のせと=北海道と樺太の間の宗谷海峡。

作者・・石榑千亦=いしぐれちまた。1869~1942。香川
            県琴平明道高校卒。

出典・・歌集「鴎」(東京堂出版「現代短歌鑑賞事典」)