**************** 名歌鑑賞 ***************


倭方に 往くは誰が夫 隠津の 下よ延へつつ
往くは誰が夫
               黒比売

(やまとへに ゆくはたがつま こもりづの したよ
 はえつつ ゆくはたがつま)

 意味・・そんなことをおっしゃりながら、あなたは
     大和の方にいる方に心を惹かれて、お帰り
     になるのですね。私は、その方が羨ましい。

     「仲良くいつまでも若菜を摘みたいね」と
     言いながら大和に帰って行く仁徳天皇。そ
     う言いながら、隠れ水が忍んで流れるよう
     に、こそっと来ては帰って行く仁徳天皇。
     帰って行く先に、好きな人がいると思うと
     やりきれなくなってくる。

 注・・夫(つま)=妻。夫から妻を呼ぶ語。
    隠津=隠れ水。草などに隠れて見えないよう
     に流れる水。
    下へ延へつつ=草花の下を流れつつ。

作者・・黒比売=くろひめ。仁徳天皇の恋人。

出典・・古事記。