***************** 名歌鑑賞 ***************


みぎはくる 牛飼ひ男 歌あれな 秋のみづうみ
あまりさびしき
                与謝野晶子

(みぎわくる うしかいおとこ うたあれな あきの
 みずうみ あまりさびしき)

意味・・湖の水際を、まっ黒な牛を牽(ひ)きつつ黙々と
    歩いてこちらにやって来る牛飼い男さんよ。
    せめて一節、牧童の唄う歌でも唄ってください
    ませんか。人影もなく、しんとして冷ややかに
    澄んだ秋の湖、この湖の雰囲気はあまりにも寂
    しくてそれに私は耐えられませんので。

 注・・あれな=「な」は終助詞で命令形を受けて優し
     く念を押す気持ちを添える語。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。堺女
    学校卒。与謝野鉄幹と結婚。「明星」の花形と
    なる。

出典・・歌集「みだれ髪」(荻野恭茂著「晶子の美学・
    珠玉の百首鑑賞」)