*************** 名歌鑑賞 *****************


暮れぬまの 身をば思はで 人の世の あはれを知るぞ
かつははかなき
                  紫式部

(くれぬまの みをばおもわで ひとのよの あわれを
 しるぞ かつははかなき)

詞書・・亡くなった人の縁者に贈った歌。

意味・・今日の暮れない間の命で、明日の事が分から
    ない我が身は思わないで、はかない人の世の
    哀れさを知るというのは、一方で、またはか
    ない事です。

    本歌は紀貫之が紀友則が死んだ時に詠んだ歌
    です。
    明日知らぬ わが身と思へど 暮れぬ間の
    今日こそ悲しけれ     (古今和歌集)

    (明日はどうなるかも分からない、はかない
    我が身であるとは思っているけれども、とに
    かく今日のうちは、亡くなった友則の事が悲
    しいことだ。)

 注・・暮れぬ間の身=今日の暮れない間の命で、明
     日の事は分からない身。
    かつは=一方で、また。

作者・・紫式部=むらさきしきぶ。970頃~1016頃。
    源氏物語の作者。

出典・・新古今和歌集・856。