*************** 名歌鑑賞 ***************


憂き身には 頼まずながら さすがまた 筆の跡をば
見てぞ慰む
                   卿内侍

(うきみには たのまずながら さすがまた ふでの
 あとをば みてぞなぐさむ)

意味・・世のつらさを一身に負っている私は、恋する
    人の心など頼みにすることは出来ないが、し
    かしそうは言っても、かって優しい言葉を書
    き連ねてくれた手紙を広げて見ては心を慰め
    るのである。

    相手の男を信頼するに足りないものの、それ
    でもかって男から届けられた手紙を広げてし
    まう女心を詠んでいます。

 注・・憂き身=この世で報われることのない辛い身。
     人生一般における状態も言うし、恋の成就
     出来ない身を言う場合もある。ここでは恋
     歌としてとっている。
    さすがまた=そうはいってもまた。ここでは、
     信頼なんか置いていないもののそうはいっ
     てもまた、の意。
    筆の跡=筆で書かれた文字の跡であるが、手
     元に残された恋する人の手紙類。

作者・・卿内侍=きょうのないし。1483~1543。

出典・・卿内侍集(笠間書院「室町和歌への招待」)。