*************** 名歌鑑賞 ***************


家妻と 茶を汲みおれば 年を経て 帰り来たりし
我が家ともなき
                 明石海人

(いえづまと ちゃをくみおれば としをへて かえり
 きたりし わがいえともなき)

意味・・妻と一緒にお茶を飲んでいると、何年もたって
    から帰って来た我が家という感じがしない。

    長年病気で療養中、治る見込みがないので体力
    が残っているうちに、両親と妻子に会いに帰っ
    た時に詠んだ歌です。
    ふるさとの我が家で、妻とすするお茶のおいし
    さ。そして懐かしさ。長かった別離の日々がな
    かったように、かっての日々の翌日のごとく、
    ごく自然に今日という日を迎えているような気
    がした。
    が、すぐにやって来る別離の日々は否(こば)み
    ようもない、この日が続いて欲しい!

作者・・明石海人=あかしかいじん。1901~1939。ハン
    セン病を患い岡山県の愛生園で療養。手指の欠
    損、失明、喉に吸気管を付けた状態で歌集「白
    描」を出版。

出典・・歌集「白描」。