**************** 名歌鑑賞 ***************


誰もみな 殿づくりして をさまれる 淀野のあやめ
刈りぞふかまし
                  後土御門天皇

(だれもみな とのずくりして おさまれる よどのの
 あやめ かりぞふかまし)

意味・・誰もが立派なお屋敷を造営して平穏無事な
    世になって、有名な淀野の菖蒲を刈って軒
    端に挿して飾れたらいいのに。

    民の生活の幸福を願うという、帝王の歌で
    す。即位後、すぐに応仁の乱となったので、
    このような平穏な光景ははかない望みにな
    った。

 注・・殿づくり=素晴らしい御殿を造営すること。
    淀野=山城国淀付近の野。景物は「菖蒲」。
    あやめ=菖蒲。端午の節句に菖蒲を葺(ふ)
     くことには、邪気を払い長寿を祈る願い
     が込められている。
    ふかまし=葺かまし。草木を軒端にさして
     飾りたいものだ。
    応仁の乱=1467年〜1477年に京都で起き
     た戦乱。室町幕府の足利義政の後継争い
     がきっかけで、各部族の対立になり、10
     年間の争いで京都は焼野原となった。

作者・・後土御門天皇=ごつちみかどてんのう。14
    42~1500。

出典・・笠間書院「室町和歌への招待」。