**************** 名歌鑑賞 ****************


今宵こそ 思ひ知らるれ 浅からぬ 君に契りの
ある身なりけり
                 西行

(こよいこそ おもいしらるれ あさからぬ きみに
 ちぎりの あるみなりけり)

意味・・自分という人間はなんという迂闊さだろう。一院の
    御葬儀の今宵になって初めて、自分が院と並み一通
    りでない御縁にあった事を、今更のように深く思い
    知り、思い知らされた事であった。

    長い詞書があります。
    一院が鳥羽離宮でお亡くおなりになって御葬儀に参
    列出来たが、大変悲しい事であった。一院が鳥羽離
    宮にお住まいになっていた頃、私は北面の武士とし
    てお供をしていたので、その時の事が思いだされて
    来る。今宵はご葬儀に参列出来た御縁の深さなどに
    思いを致し、昔の事、今の事が思いだされ、哀しみ
    に濡れて詠みました歌。

    恩師、友人、先輩、そうした人の訃報を聞くと「浅
    からぬ君に契りのある身なり」と改めて深い縁があ
    った事に思いがはせるものです。

 注・・一院=鳥羽法皇。1156年崩御。
    浅からぬ=「契りに」掛かる。
    契り=因縁、運命的なつながり。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。俗名佐藤義清。
    下北面の武士として鳥羽院に仕える。1140年23歳
    で財力がありながら出家。出家後京の東山・嵯峨の
    あたりを転々とした。陸奥の旅行も行い30歳頃高野
     山に庵を結び仏者として修行した。

出典・・山家集・782。