**************** 名歌鑑賞 ****************


薬のむ ことを忘れて、
ひさしぶりに、
母にしかられしを うれしと思へる。
                     石川啄木

(くすりのむ ことをわすれて ひさしぶりに ははに
 しかれしを うれしとおもえる)

意味・・病のための薬をつい飲み忘れていると、薬を飲ま
    ねばと母親が私を叱ってくれた。大人になって、
    こうして母親にしかられるのは久しぶりのことだ
    が、親子の絆(きずな)、母親の深い情愛を感じ、
    母に叱られたことが嬉しいとさえ思われたことだ。

作者・・石川啄木=いしかわたくぼく。1886~1912。26歳。 
    盛岡尋常中学校中退。与謝野夫妻に師事するため
    に上京。新聞の校正係などの職につく。

出典・・哀しき玩具。