**************** 名歌鑑賞 ****************


をさな子の 服のほころびを 汝は縫へり 幾日か後に
死ぬとふものを
                    吉野秀雄

(おさなごの ふくのほころびを なはぬえり いくひか
 のちに しぬとうものを)

意味・・病気の末期にある妻が、我が子の服の綻(ほころ)
    び縫っている。その変わることのない母親の姿
    を見ていると痛ましく思われて来る。

 注・・とふ=「といふ」の転。・・という。

作者・・吉野秀雄=よしのひでお。1902~1967。慶大卒。
    良寛や会津八一の研究者。

出典・・歌集「寒蝉集」(杉山喜代子著「短歌と人生」)