**************** 名歌鑑賞 ***************


師の君の 目を病みませる 庵の庭へ うつしまいらす
白菊の花
                  与謝野晶子

(しのきみの めをやみませる いおのにわへ うつし
 まいらす しらぎくのはな)

意味・・師の君、私の先生は、お気の毒にも近頃目を
    患っていらして、視力が十分でなく遠出など
    もままならぬ身。そこで私は、その御目の慰
    みになることかと思って、我が家より先生の
    草庵のお庭に、みごとに咲いた白菊を根ごと
    移し植えてさしあげました。

 注・・師の君=藤間流の舞の師匠。
    ませる=いらっしゃる。「います」の
     尊敬語。
    まいらす=さしあげる、の謙遜語。

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。堺
            女学校卒。与謝野鉄幹と結婚。「明星」の花形
    となる。

出典・・歌集「みだれ髪」。