*************** 名歌鑑賞 ****************


賃銭の どれいならざる 誇りもて はたらきしことを
われは謝すべし
                 小名木綱夫

(ちんぎんの どれいならざる ほこりもて はたらき
 しことを われはしゃすべし)

意味・・いくら働いても貧しい生活ではあるが、金のため
    奴隷となって働いては来なかったことを誇りにし
    よう。そして、それが出来たことに感謝しょう。

    死の前日に詠んだ歌です。
    働く事に面白さ価値を見出して働いて来た。賃金
    が高い安いを基準にして働いて来たのではない。
    これが私の誇りであった。そのように自分の思う
    ように働けた事に感謝したい。

作者・・小名木綱夫=おなきつなお。1911~1948。37才。
    府立工芸学校卒。新日本歌人協会の創立に加わる。
    14歳で印刷見習い工として働き始める。持病の喘息
    で工場を辞め、以降たびたび健康を害して働いては
    辞めるという生活を送る。

出典・・歌集「太鼓」(本林勝夫篇「現代短歌鑑賞辞典」)