**************** 名歌鑑賞 *****************


とにかくに あればありける 世にしあれば なしとてもなき
世をもふるかも
                     源実朝

(とにかくに あればありける よにしあれば なしとても
 なき よをもふるかも)

詞書・・落ちぶれた人が世の中に立ちまじり歩いているのを
    見て詠んだ歌。

意味・・(どんな事情があっても)とにもかくにも生きていれ
    ば世を過ごして行けるこの世なのだから、何も無く
    ても、ないままに世を送っている事だなあ。

              大きな欲を出さなければ、何とか生きて行ける世の
    中ということです。
    世の中には、価値のあるもの、立派なものがあり、
    その一方、無価値なもの、つまらないものがあるが、
    すべて相対的なものであり、それに執着するに足り
    ない。落ちぶれて気弱になっていも、「落ちぶれる」
    といっても、これは相対的な事で自分より下の者が
    見れば、羨ましい状態なのかもしれない。だから悲
    観せずに元気を出して生きて行きたいものです。
    
 注・・わび人=気落ち、気弱になった人。みすぼらしく
     落ちぶれた人。
    あればありける=有れば在りける。生きていける。
    ふる=古る。年月がたつ。

作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1219。28歳。
     源頼朝の次男。鎌倉幕府三代将軍。鶴岡八幡宮
     で暗殺された。歌集「金槐集」。

出典・・金槐和歌集。