**************** 名歌鑑賞 ****************


いざここに わが世は経なむ 菅原や 伏見の里の
荒れまくも惜し
                      * 詠み人知らず 

(いざここに わがよはへなん すがわらや ふしみの
 さとの あれまくもおし)

意味・・さあここで、私の生涯を暮らす事にしょう。私が
    去って、この菅原の伏見の里の荒れてしまうのが
    惜しいので。

    私が住みにくいからと言って、他に移ってしまっ
    たならば、ここがよりいっそう荒れてしまうであ
    ろうから、私はここに定住しょうというのである。
    社会情勢で寂れようとした頃の歌です。
    現在で言えば、産業の空洞化により地域が荒廃し
    たので、芸術文化の創造によって地域の再生を計
    ろう、という感じです。

 注・・わが世=私の生涯。
    菅原や伏見の里=奈良市菅原の一帯の地。「や」
     は・・の、・・にある、の意。菅原にある伏見
     の里。
    荒れまくも惜し=荒れるであろう事が惜しまれる。
     「まく」は推量の助動詞。

出典・・古今集・981。