*************** 名歌鑑賞 ***************


国こぞり 力のもとに 靡くとは 過ぎし歴史の
ことにはあらず
                柴生田稔

(くにこぞり ちからのもとに なびくとは すぎし
 れきしの ことにはあらず)

意味・・国民が皆こぞって、権力をもって号令を掛け
    る側になびき従うというのは、決して過去の
    歴史のことではない。

    昭和10年に詠んだ歌です。「過去の歴史のこ
    とではない」と言い切って「現に日本人は皆
    従っているではないか」という心を言外に漂
    わしている。昭和10年は軍部が大陸に出兵し、
    軍国主義に従う風潮が日々に強まっていた時
    代です。

 注・・国こぞり=国内の者がこぞって。

作者・・
柴生田稔=しぼうたのる。1904~1991。歌人
    国文学者。

出典・・歌集「青山」(本林勝夫篇「現代短歌鑑賞辞典」)