*************** 名歌鑑賞 ***************


白露は 消なば消ななむ 消えずとて 玉にぬくべき
人もあらじを            
                  詠み人知らず

(しらつゆは けなばけななん きえずとて たまに
 ぬくべき ひともあらじを)

意味・・白露なんか消えるなら消えてしまうがよい。
    消えずに残っていたとしても、玉に貫き通
    して大事にしそうな人もないでしょうから。

    ある男が、「こんなありさまでは、恋死に
    そうです」と女に言ってやったら、「死ぬ
    のなら死になさい。生きていたって甲斐の
    ないお方なんだから」と言って女がこの歌
    を詠んだもの。男はひどく失礼な、と思っ
    たけれども、恋心はいっそう募ったのであ
    った。

 注・・白露=男にたとえている。
    消(け)ななむ=消えてしまう方がいい
     でしょう。「なむ」は未然形に接続
     して願望を表す、・・してほしい。
    玉にぬく=玉として緒に貫き通す。
    人もあらじを=だれもあなたを相手に
     する人はあるまいから、の意。
 
出典・・伊勢物語・105段。