*************** 名歌鑑賞 ****************


1. 水まさる をちの里人 いかならむ 晴れぬながめに
  かきくらすころ
                   薫大将
  返し
2. 里の名を 我が身に知れば 山城の 宇治のわたりぞ
  いとど住み憂き
                   浮舟

 (みずまさる おちのさとびと いかならん はれぬ
  ながめに かきくらすころ)
 (さとのなを わがみにしれば やましろの うじの
  わたりぞ いとどすみうき)

1の詞書・・長雨のころ、浮舟の君に

1の意味・・川水が増える遠くの「をち」(宇治市の地名)
     の里人(浮舟をさす)はどうしていることだろ
     うか。晴れぬ長雨に心も暗くなって、空を眺
     めるこの頃ですが。

  注・・をち=「遠」と宇治市にある地名とを掛ける。
     里人=ここでは浮舟をさす。
     かきくらす=掻き暗す。心が暗くなる、悲し
      みに沈む。

2の意味・・私の住む里の名「憂し」(つらい)を身をも
      もって知っていますので、山城国の宇治の
      あたりは本当に住みにくく感ぜられます。

      源氏物語では、浮舟は薫と匂宮との三角関係
      となっている。

作者・・薫大将・浮舟=源氏物語の浮舟の巻の登場人物。

出典・・源氏物語浮舟の巻(樋口芳麻呂著「王朝物語秀歌
    選」)