*************** 名歌鑑賞 ***************


不吉なる ものの如くに 鈴懸の 葉はひるがへる
この曇日に 
                長沢一作

(ふきつなる もののごとくに すずかけの はは
 ひるがえる このくもりびに)

意味・・うっとうしい曇り日の午後湿ったような風が
    吹いている。街路樹の鈴懸の葉は風に騒ぎ立
    ち、ひるがえり葉裏の白い波が広がっている。
    見て居るとなんだか不吉なものに見えて来る。

    不吉なもの、すなわち何らかのの悪い兆候を
    感じ取った作者です。緊張感をもって、身の
    回りを眺め何か落ち度がないかと点検してい
    る作者が感じられます。

    古事記に出て来る歌、参考です。

    狭井河よ 雲立ち渡り 畝傍山 木の葉さやぎぬ
    風吹かむとす    (意味は下記参照)

 注・・鈴懸=プラタナス。高木落葉樹。街路樹や公園
     によく植えられる。葉は紅葉の形をしている。

作者・・長沢一作=なかさわいっさく。1926~2003。
    慶応義塾商業卒。佐藤佐太郎に師事。

出典・・長沢一作著「自解100歌選・長沢一作集」。
参考歌です。

狭井河よ 雲立ち渡り 畝傍山 木の葉さやぎぬ
風吹かむとす         
               伊須気余理比売
 
(さいがわよ くもたちわたり うねびやま このは
 さやぎぬ かぜふかんとす)

意味・・狭井河の方から雨雲が立ち広がり、畝傍山では
    木の葉がざわめいている。今にも嵐が吹いて来
    ようとしている。

    危険が押し寄せているので警戒してあたる事を
     促(うなが)した歌です。
    神武天皇の死後、皇位継承争いが起こり、継子
    (ままこ)が后の皇子を殺そうと計ったので、叙
    景に託して危急を知らせた歌です。

 注・・狭井河=奈良県桜井市を流れる川。